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クレヨンしんちゃん「謎メキ!花の天カス学園」映画レビュー

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2021年07月30日に公開されたクレヨンしんちゃんの新作映画、
「謎メキ!花の天カス学園」
早速見に行ってきました!

前作の事を書いた時(下記リンク参照)、
「(新作は)正直、期待値は低い」と書いていましたが。
良い意味で裏切られた。
"学園ミステリー"をしっかり描きつつ、だけどそれに振り回されすぎず、きちんと中身のある、笑って泣ける、しんちゃんらしい作品だった。

ta7cr5prm.com

 ここからがレビューです。
※重要なネタバレは伏せているつもりですが、見てないと分からないことも沢山出てくるので、ご注意下さい。

 

概要

今作は"かすかべ防衛隊"がメインで、しんちゃんと風間くんの友情のお話。
2人は大喧嘩をして、事件があって、最終的には仲直り…の作品、意外と今まで無かったんだなぁ。
そして学園ミステリーがテーマ。クレしん映画らしくファンタジー満載ではあるが、2時間サスペンスチックでもあり、これが意外にも子供騙しではない。
色々な憶測を立てられながらアリバイが崩れていって、
最後まで犯人分からずに振り回された大人とは私の事です。

AIを搭載した超エリート校「私立天下統一カスカベ学園」(以下、天カス学園)が舞台。
しんちゃん達かすかべ防衛隊の5人は、天カス学園で、1週間の体験入学を受ける。

10代という複雑な世代

生徒会長のチシオちゃんが、しんちゃん達に学校案内をする。
正直冒頭から、絶対にこんな学校行きたくねぇな…ってなった。
生徒の行動をAIロボットが細かく採点(エリートとしてふさわしいかどうか基準)、点数によりクラスや待遇が決まる。
"エリート"なんてものに毒された、不気味な制度。
(もしかしたら近未来の姿かもしれないが…)

ただ自分の様に、30代になって精神的に余裕を持ち、キャリアなんて知らない、趣味万歳!みたいな、自由にやってる大人からしたら、
天カス学園が異常である事は一目瞭然だ。
しかし、将来が見えず、周りと比較したり、自分の存在意義に悩む10代であればどうだろうか。
私もまた、もがき苦しんだ当時を思い出せば、たやすく想像がついてしまう。
10代どころか20代すら自分が分からず、言われるままに人の評価のままに生きていたことがあったから。
"エリートになれば何でもこなせる。悩みもなく、失敗もせず、幸せに過ごせる。"
呪文に似た言葉で影響されてしまうのではないか。
そんな不安定な思春期の若者の心が利用され、色々な騒動に発展していくところが、リアリティで印象的だった。

かすかべ防衛隊

"エリート"に毒される点では、風間くんもそうだ。
体験入学中、点数が上がらず不安定になってゆく。
そして、彼と対照的で、自由奔放に過ごしているしんちゃんに当たってしまう。
2人は大喧嘩し、直後、風間くんは"とある事件"に巻き込まれてしまう。

しかし、風間くんはただ "エリートになりたかった"だけではない。
何故しんちゃんに当たったのか。その理由が後半の展開で判明する。
ここは本当に泣けるので…みなさん、是非劇場で…。

しんちゃん&風間くんがメインでありつつ、他メンバーもそれぞれ良い役回りだった。
ネネちゃんは事件に真相追及に関して、完全にお手柄だったし。
(さすがは2時間ドラマガチ勢…笑)
マサオくん、過去の作品でも偶に人格崩壊が起こっていたが、今回は学園の番長と関わることでチンピラ化。しかし、ただグレたわけではなく、番長の人柄に惚れた為だった。
番長はマジでイケメンだった(文字通り)。
そしてボーちゃんは"人間が苦手"な女の子、ろろちゃんに淡い恋心を抱く。
これぞ青春。胸が苦しくなった。おばちゃん泣けてしまうがな。

コンプレックスと共存する

今作のキーパーソンであるチシオちゃんは、大きなコンプレックスを抱えていた。
後半でかすかべ防衛隊メンバーが、彼女のコンプレックスをバカにせず、むしろ"かっこいい"と褒め、最後は彼女自身のトラウマを克服する。
チシオちゃんめっちゃくちゃ良い子だったからこそ、しっかり救われてくれて号泣ものだった。
傷つかないために、コンプレックスを押しつぶすのではない、共存する事で、人は優しくも強くもなれるんだろうな。

野原一家

今回、野原一家の出番は極端に少なかったが、ひろしとみさえの台詞は、
作品全体に大きく影響していた。良い役回りだった。
両親の価値観が、しんちゃんを伸び伸びと優しい子に育てているのかもしれない。
個人的に、みさえがしんちゃんのリュックに、こっそりチョコビを忍ばせていたところ、好きだったな。
確かに校則違反ではある。
しかし、"何でもキッチリ"になると、子供は疲れてしまうのではないか。
少しハメ外す事で、心が豊かになっていくこともある。
0%か100%だけではない、その間の選択肢がいかに重要であるか。
自分の両親も、似た様な感じで育ててくれたので、本当に感謝している。

結末

全体的に良かっただけに、終わり方が唐突すぎて、え?そこで終わり?!と少し気が抜けた。
中途半端だったわけではない。物語はしっかりと終わらせている。
しかし、個人的には前作の「ラクガキングダム」みたいに、少々余韻がある終わらせ方が好みだ(あのラストは何度見ても泣く)。
尺が足りかなったのかな…って思わなくもない。今作に限った話ではないが。

チシオちゃんとサスガくんの今後の関係も気になって仕方ない。
(EDのカットにはほっこりさせられたが。)

EDテーマは、マカロニえんぴつの「はしりがき」。
歌詞が今回の映画を明確に表していて、エンドロールでしっかり余韻には浸れました。

総評

最初は期待をしていなかっただけに、
予想の何十倍も面白くて、劇場で見れて本当に良かった!ってなってる。

今作、若者や子供を持つ親御さんに是非見てほしい作品だと思うけど、
自分みたいないい大人のフリーダム単身野郎が見ても、まっすぐに刺さるものがあった。

エリート街道を進む事は、一つの大事な結論ではある。
だけど、心からかっこいいと思えるものは、
必ずしも、学力やスポーツだけではない。ロジカル的な点数だけで判断できない。
失敗した時、挫折を経験した時、悩んだ時、間違った時…それをどう乗り越えるか、どのように手を差し伸べるべきか…。
そんな大事なもの見過ごさなければ、きっと、一生青春が出来るんではないか。

何歳になっても未来への希望を信じられる、素敵な作品に出会えました。