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【ライブレポート】The Cheserasera 2021 年末ワンマンツアー〜追加公演〜/下北沢Shangri-La

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※配信アーカイブ期間中につき、ネタバレにご注意下さい。

 

The Cheseraseraの活動休止前のライブが2022年1月9日、下北沢シャングリラで開催された。
12月のFlowers Loftの際のレポでは話したが、
これまでのバンド活動の中での最大キャパの会場(恐らく)だったにも関わらず、チケット先行販売ではキャパを大きく上回る申込みがあり、その後の一般発売でも1分ちょっとで完売。
まさかのプレミアチケットとなった。
私は一般発売でギリギリで滑り込んだのだが、現地に行きたくても行けなかった方は多い。
その為急遽、有観客+配信の形になった。

大好きなバンドの活動休止前の公演、最初から最後までしっかりと目に焼き付けて来た。
出来る限り想いをを全部書きたいと思ったので…長くはなりますが、お付き合い頂ければ幸いです。

 

開演。
SEではお決まりのDoris Day『Que Sera, Sera』が流れ、メンバーが登場する。
宍戸さん(Vo.)・西田さん(Ba.)がQue Sera, Seraを口ずさんでいたように見え、その時点で既に切なくなってしまった。

 

1曲目は『good morning』。ポップだが切なく優しい。まさにケセラセラらしい1曲。
私のケセラセラのライブ初参戦は2017年「dry blues」のツアーで、その際の1曲目もgood morningだった。
最初にライブを見てから今日までを思い返し、早くも涙が出てしまう。

宍戸さんが「また会えますように!」と叫び、『賛美歌』が披露される。
前回のライブの際、今日(1/9)は定番曲中心にしたいのような事を話していた。しかし次にきたのはインディーズ時代のコア曲、『風に吹かれて』だった。
あれ!?定番曲縛りじゃ無いじゃん!

後のMCにて宍戸さんが「本当は定番曲をやるつもりではいたが、"活休前にやりたい曲"も入れたいと思ってセトリを組んだ」と話していた。
そんなわけで今回は、定番曲+懐かしい曲・コア曲の"The Cheseraseraの集大成"の様な、まさにスペシャルセットリストとなった。

 

最高に切なく最高にロックな『最後の恋』の後半では、西田さんが客席にクラップを煽る。
西田さん、今回は比較的前方に出て来て演奏したり、沢山見せ場があって嬉しかった。

「未来のことはわからないけど、今ここにある音楽は本物」をテーマに、どこか懐かしさのある曲『youth』を披露。

同じ時間同じ夢を見て
同じ未来を刻むとして
笑いあえるなら
それは素敵な事でしょう

サビの歌詞、まさにこのライブの空間だなぁと思い、胸が熱くなる。

ここで再びインディーズ時代の曲『カナリア』。
イントロの美代さん(Dr.)のドラムだったり、Aメロのボーカルだったり、全体的にキレッキレで盛り上がりを見せた。

 

何気に久々に聴いた気がするのが、有名曲『No.8』。
この曲における宍戸さんの歌声、ちょっと渋くて美しくて好み。ライブだとますますそれが伝わってくる。
一見ロマンチックなラブソングでもありながら、

無いものは作ればいい
笑うために生きていたい

車の荷台には
口じゃ言えない何かと
淡い希望を積み込んで走ってる

何となく、今までの"The Cheseraseraとしての活動"すらも連想させられてしまうメッセージ。今回はそれを思わされるような空気感があった。

『seen』はある意味1番のダークゾーン。
サビでの宍戸さんの美しい高音、そして間奏の演奏がエモすぎるので、これを生歌で聴けて本当に嬉しかった。

 

MCにて、美代さんが唐突に自分の経歴を語り出した。
幼馴染である西田さんとの学生時代の話から、ドラムを始めたこと、音楽のこと、前のバンドのこと…そして宍戸さんに出会いケセラセラを結成するまで、を事細かに話していた。

「(音楽以外の活動も含めて)全てバンドのためにやっていた。」
「今まで立ち止まったことがなかった。」
「未来のことはどうなるか、まだ分からない。」

ここまで言い切ってしまっているので、正直活動再開の可能性に関して少し不安を持ってしまう。
それでも、美代さんのストイックな姿勢や演奏を見ていても、MCでの話に対しても、
彼がケセラセラを心から大事に想っていてくれている事が伝わってきた。
今はただ、信じるしかない。

"前のバンド"って単語が出て来た時は少しドキッとした。
勿論クリープハイプの事も好きだけど、
でも私は、The Cheseraseraにおいての美代さんと西田さんの事が大好きで、この3人じゃなきゃダメだった。
ケセラセラを選んでくれてありがとう、と心から思う。

 

「出会ってくれてありがとうございます。」
とMCを締めた後、その美代さんが作詞をした『白雪』『うたかたの日々』『ラストワルツ』が3曲連続で披露された。

美代さんといえば個人的に『Night and Day』のイメージが強かったがあえて歌わず、
全て"別れ"の曲を選んでいるのが切なすぎる。

眩しすぎて
さよならなんて言えない
(『白雪』より)

ねぇあと少しだけ
このままでいさせて
(『うたかたの日々』より)

1つ1つが刺さる。
ケセラセラの曲の言葉選びはシンプルだけど、人の気持ちそのままを表現しているから、胸の中にスッと入ってきて、感情を正確に湧き出させてくれる。

"このままそばにいて"の歌い出しで既に鳥肌が立った『ラストワルツ』は、ずっと聴きたかった大好きな曲。
美しく切ないメロディと歌詞、そして宍戸さんの歌と、西田さん・美代さんのコーラスが合わさるその光景に、前が見えなくなる程涙が溢れてきた。

 

真っ直ぐで、ロックで、だけど心の隙間を埋めるような切なさと優しさがあって…色々な気持ちになれる楽しさがあって、時には人生の後押しをしてくれて。
私はそんなケセラセラのライブが心から大好きで。
今回も、出だしからそんな"ケセラセラらしい"ライブだったから、楽しくなっちゃうし、つい忘れかけていたんだけど…、
美代さんのMCのくだりからのこの3曲で、"活動休止するんだ…"と改めて思い出させられてしまった。
全ての景色が優しく切なく、そして儚い。どうしようもなく苦しい気持ちになる。
そして、改めて美代さんの歌詞も本当に素敵だなと思わされた。
また彼の新しい曲が聴けますように。


次は西田さんのMCのターン。
お得意(?)の、血液型と星座に関する豆知識。

「今まで出会ったA型×獅子座のボーカルは泣きながら歌える。」
の話を一生懸命して終了。(※今後も特にMC無し)

まさかの展開に笑ってしまったが、西田さんのこういうところが安心する。
対バンのバンドマンからも含めて愛されている彼のキャラクターが私も大好きで、
西田さんが居てこそ、バンドの空気感も明るくなっているなぁって改めて思わされた。
それをしばらく味わえなくなるのはやっぱり寂しい。

 

後半戦。
オシャレでメロウな『ひとりごと』は、最新EPの表題曲。
新しいタイプの曲だし、ますます今後の活躍を楽しみにしていたところだったんだけど…。
そして"音楽への感謝の歌"として『幻』を披露。ひとりごとからの流れが絶妙。

そこから『BLUE』『春風に沿って』と明るく爽やかなターンへ。後者は別れの曲ではあるが、別れを"前向き"に捉えている。歌詞のメッセージと宍戸さんの笑顔がどことなくマッチしている。

 

宍戸さんはMCにて、まず、バンドの歴史について話だす。
結成時のバンド名は「昼行灯」だった。
"場違いで役にから立たない"という意味らしく、宍戸さん自身が"自分は何もできない"って思ってた為、この言葉がしっくりきたとの事。
そこからケセラセラ(=なるようになる)に改名。
「ただ役に立たない奴よりはちょっとだけポジティブになれるからと思って。」というのが宍戸さんらしい。

そういえば前半でも宍戸さんは、
「もしも自分が泣いてたら、それは寂しいからじゃなく"いい歌だなぁ"と思って泣いてるから。」
と冗談混じりに話すなど、おちゃらけて会場を和ませるシーンをよく目にした。
しかし、昔はこんな軽い冗談とか言えなかったとの事。

「みんなに出会えて、友達ができたかもって思えて、そこから変わっていった。」
「今は自分に嘘をつきたくないと、"ちゃんと"思えるようになったから。」
それが自信になり、ステージで笑えたり冗談を言えるようになったんだなぁと考えたら、私はミュージシャンでは無いけど、その気持ちが凄く分かる。

私は昔はTwitterでもメンヘラなことばかり書いていたり(笑)、ピリピリしていたし、人が自分のことを理解してくれない不安を何かにぶつけていた。
別に今幸せになったとかじゃ無いけど、一定の自信がついて、周りがよく見えるようになった事で、書くことも発言する事も変わっていった。
言う言わないが嘘か本当かなんて本人にしかわからないし、勝手に決めつける人はその程度の人だし気にする必要ない。
わかる人にだけ分かればいいから、出来るだけポジティブに。
…少し違うかもしれないけど、宍戸さんの話を聞いて、そんな事を考えていた。


「引っ越して家で楽器ができるようになったから、また曲を作るよ。」
「またこのバンドでステージに立てることを夢に見ている。」
と、宍戸さんは復活に対しても前向きな姿勢を見せていた。

「関係者の皆様、本当にありがとうございます。」
関わった全ての人に感謝を告げ、

「自分を見失いそうな時に思い出してください。
『東京タワー』という歌を歌います。」

そう話し終え、『東京タワー』の演奏と歌が始まる。

思えばケセラセラのトップ2を争う定番曲なのに、年末からのツアーでは一度も歌われなかった。
そもそもライブでやらない確率が結構高い曲だったし、今日やらなかったらどうしようって思った。安堵と嬉しさで涙がボロボロ出てきた。

東京タワーは私がケセラセラを知ったきっかけの曲だった。
たまたまWebで紹介されていたこの曲を聴いた。
20代後半、社会に疲れて正に自分を見失いそうになっていた私の心にスッと入って来てくれた。

www.youtube.com

それから約6年、今では遠征するまでに好きなバンドになった。
勿論、今では沢山の曲を好きになったが、もしかしたら最初に聴いたのがこの曲じゃなければ、ここまでにはならなかったかもしれない。それぐらい特別な曲である。

これまでは一定の落ち着きがあった宍戸さんだが、東京タワーでは少し違った。
どこか必死に、熱く、ストレートに感情をぶつけようにしているように思えた。
今まで真っ直ぐに走ってきた12年間を思い出していたかもしれない。
私もまた、出会ってから今日までのことが走馬灯のように蘇ってきた。
ケセラセラに出会えて、下北沢まで飛んできて良かった。心からそう思った。

 

東京タワーから本編終了までは定番曲で攻める。
美代さんのイントロの激しいドラム、西田さんの忙しいAメロのベース等、演奏面でも楽しめる明るいナンバー『ファンファーレ』。
後に明かされたが、この曲で美代さんはスティックを折ってしまったらしい。しかも斜めに。しかもかなり鋭く。
なかなか見れる光景じゃなくて面白かった…(笑)。

代表曲『月と太陽の日々』では相変わらずのキレッキレなステージを見せる。
間奏前で宍戸さんが「下北ー!」と全力で叫んだのが最高にエモかった。

「最低で最愛で、やっぱり最低な愛の歌です。」とお決まりのセリフを放ち『I Hate Love Song』で本編を終わらせる。
これもまた最高にロックで、最初に聴いた時から私の人生のバイブルソングになった程度には、その痛々しい失恋の歌詞に衝撃を受けた曲。
そういえばコロナ禍以降は”笑わせんなよ”のフレーズを客席が叫べなくなった為か、宍戸さん、このターンでは色々なレパートリーでの表現をする様になった。
今回は、

「全然笑えねぇ!」

と笑顔で叫んでいて、なんだか凄く嬉しくなった。
(ちなみに2020年の配信ライブだったと思うけど、何故か「緊急事態宣言」って言い放っていたのが個人的に1番お気に入り)

 

アンコール。再びメンバーが登場し。
グッズ紹介後、『消えないロンリー』を披露。
寂しさのある曲調に合わせて、

今日までの時間は
あっという間だったね

の歌詞がまた突き刺ってしまう。
2番のAメロで西田さんのコーラスが合わさるところが大好き。
個人的に、宍戸さんってコーラスを必要としない(良い意味で)特徴的な声だよなぁって思っていたんだけど、でも、西田さんのコーラスは合うなぁって思う。

次もまた懐かしいコア曲『でくの坊』。
いわゆる”社会不適合な主人公”の曲。でもそんな人間のダメなところすら愛おしい。
宍戸さんがMCで度々、自分への劣等感を口にしていたが、
全然そんな事を思う必要は無いけど、でも、そういう気持ちのお陰で、唯一無二の名曲を生み出しているんだろうなぁと思った。

 

ここで終演と思いきや、ダブルアンコールとなった。
冒頭で「今日は楽しかったですか?」と聴く宍戸さんの言葉と会場の空気感で、
本当に終わりが近づいているんだなぁ…と、切なく寂しい気持ちになる。

まずはアンコール定番曲『Drape』。
今までは「今日のライブ終わってほしくないな〜!でも楽しかった〜!」ぐらいの気持ちだったが、今日の"終わってほしくない"はやっぱりいつもと違う。
だけど、

このままさよならは言わないでおくよ
ただ寂しいから

そんな気持ちをこの場所に残したまま、私もまた明日からの"旅立ちの日々"を生きなければ。


「たとえ何もできなくても、花だったらそこで生まれ変わっていける。」
そんなポジティブなメッセージが込められた『さよなら光』。
先月のライブでもアンコールで歌われたが、今回も大事な枠での披露となった。
"生まれ変わる"…結成時と同じ気持ちで、未来の自分達へエールを送っているようにも感じ取れた。

因みに私が思う、"ケセラセラのメジャーレーベル時代の五大有名曲"といえば、
『月と太陽の日々』『東京タワー』『賛美歌』『さよなら光』『No.8』
なんですが(実際はさよなら光はリメイクされたインディーズ初期曲)、実は今回全部歌ってるんだよね…。
凄く珍しいし、コア曲も含めてこうなるって、
これこそ過去ナンバーワンの特別セットリストかもしれない。

 

さよなら光を終え、今度こそ終わってしまう…。
メンバーがはけた後、会場で終演を感じさせられるBGMが流れた。
しかし客席の拍手はやまず、再びメンバーが登場する。
まさかのトリプルアンコールだった。

本当のラスト1曲。なんだかんだ最後にこれを聴けると信じていた、『SHORT HOPE』。
最初から最後まで熱くて、ストレートで、キレッキレで。
メンバー全員が、全てを出し尽くしているステージだった。
私も負けないように、今までで一番手を振り上げて応えた。
涙は止まらないけど、情熱も止まらなかった。

 

1曲目の『good morning』

拝啓 世界の片隅から
愛されないならばいっそ
愛してあげるよ

から、
最後の『SHORT HOPE』

仮に誰からも相手にされないとして
情熱を馳せたまま膝を抱えていても
君の情熱はずっと綺麗なままだろ?

前々からわかっていたよ
僕のできること
そんなに無いけどがむしゃらだよ
君の為

のメッセージの繋がり。

ケセラセラはずっと、私たちの居場所で居てくれて、全力で愛してくれていた。
そんな優しいバンドだった。

 

 「もっとかっこよくなって会いましょう!」

宍戸さんがそう叫び、メンバー退場。
本当に終演となった。

 

そして、The Cheseraseraは活動休止となった。

 

終わった直後も、むしろ今だって最高に寂しくなっている。
だけど私も「ケセラセラのファンはかっこいい」って言われるように、
2022年は…2022年こそは自分らしくありつつも、成長しよう。

そして、来年かどうかはわからないけど、また素敵な新曲が聴けます様に。
また最高で最強に楽しいライブをこの身で体感出来ますように。

出会ってくれて、私の人生の一部なってくれて、
本当にありがとうございます!

 

2月1日の「singing bar look」にて、宍戸さんの弾き語りを見に行けるので、
まずはそこを楽しみにしつつ、3人の今後が素敵なものになる事を心から願い続けます。

 

最後に、翌日の帰りの飛行機で書いてTwitterに投稿した痛いポエム(笑)を共有して、
今回のレポを終わらせます。

 

東京タワー

東京タワー

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