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BABELの塔は完成した。 - カオスの百年TOUR 2020~CHAOSMOLOGY~/Zepp Fukuoka

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※ツアー中につき、ネタバレにご注意下さい。

 

BABELのリリースツアーは2017年に開催されていたが、私は当時、参戦しなかった。
理由は単純で、福岡公演が無かった為だ。これまでは当たり前の様に来てくれていたので、寂しく感じた。結局そのお陰で、以降はがっつり遠征をするようになったのだが。
当時のツアーは滝(Gt.)の体調もあり未完成のまま終わっていたが、私にも心残りがあった。

また、私は『Black Market Blues』あたりの時期で9mmを好きになった。その為インディーズ時代の曲やライブはリアルタイムで通過していない。

そんなこともあり、今回の『BABEL』『Gjallarhorn』『Phantomime』の再現ライブ開催は感謝しかない。
2021年6月19日、福岡公演に参戦してきた。

 

第1幕:BABEL 

アルバム「BABEL」再現ツアー。
開演。幕開け後にメンバー登場…といったシチュエーションが通常のライブである。
しかし今回は、幕が開けるとメンバーは既に各ポジションで待機。無言で立っているその姿、まるで演歌歌手だったんだが。
私の座席は下手側で、和彦(Gt.)側のつもりでいたが…目の前には大きなドラムセットとかみじょうちひろ(Dr.)の姿。4人が水平に並んでいた。
セットリストはアルバムの曲順そのまま。第1幕でのMCは一切なし。
異色な回だったが、1曲1曲に集中できるライブだった。

BABELは"新しさ"と"初期の9mmらしさ"両方を楽しめる、個人的にお気に入りの作品。シングル曲は無し、全曲が卓郎(Vo.)作詞+滝作曲の王道タッグで組まれている為もあるだろう。

アルバムには華やかな曲もあるが、歌詞は全体を通してシリアスだ。

僕のいる意味が世界の中に見つからないとしたら
意味のない歌で ララルララルラ 全て壊してやるのさ
(『ロング・グッドバイ』より)

君の勝利を誰も望まなくても 立ち上がれよ何度でも
(『Everyone is fighting on this stage of Lonely』より)

いずれの曲も前向きと見せかけて、"孤独"を隠せていない。

 

あなたは僕だけを
愛してはくれませんか
(『それから』より)

この出だしは思わずドキリとさせられる。
9mmの曲で"愛"を歌ったものはそこそこあるが、切なさや苦悩が前提になっている事が多い。(『I.C.R.A』のサビは"愛し合え"と叫んでいるものの、不自由で生きづらい状況ゆえかもしれない。)

そんな独特の暗さがある楽曲達を、生で聴くと一層リアリティにさを感じる。
特に『ホワイトアウト』、卓郎のボーカルの切なさとメンバーの美しい演奏と合わさり、胸が張り裂けそうだった。

また、BABELは滝のライブ活動休止後のアルバムでもあり、
暗さだけではなく、滝への応援歌や、これからのバンドの決意も伺える。
それを強く感じられたのが、ラストの曲『それから』だった。

どんな未来が待ち受けていても
わたしはあなたと乗り越えたいのさ
(『それから』より)

哀愁漂うBメロ、ぼやかしながらも本音を突き刺すCメロ。
そして、光が刺すようなサビ。
堂々とした卓郎の歌声が会場中に響く。
その隣には滝がいる。
私はこの言葉が聴きたかった。この景色が見たかった。
彼らが9mmを諦めないでいてくれてよかった。嬉しくて涙が溢れた。

きっとバンド自身も、そして私も、
この日ようやく、BABELの塔の完成を見届けられた。

 

第2幕:Gjallarhorn → Phantomime

インディーズ時代の1枚目、2枚目のミニアルバムの再現ツアー。
第1幕の特殊なオープニングを思い出し構えていたが…幕開け・SE・メンバー登場ともに、いきなりいつもの9mmに戻った。
まるでBABELがボーナスステージ、今からがメインステージ。
うおー!待ってたぞー!と叫びたくなる程度にテンション爆上げ。(叫べないこのご時世が悲しい)。

9mmのはじまりのはじまりである2枚。演奏面、特に滝のギターが今よりもゴリゴリで激しい。
曲調のインパクトは強いが、歌詞はBABEL以上にネガティブである。

アルバム全体のレビューは別の機会で行いたいが、
特にGjallarhornの楽曲。主人公は孤独を抱えながら、淡々としており冷静さも窺える。良い意味で不気味である。"今"の9mmの演奏で、より深みが増してくる。

Phantomimeも同様の雰囲気だが、後半の『少年の声』『sector』は少しだけ、明日への希望や願いを込められている気がする。
まるで9mm(序章)の結末。これからの未来で何かが始まりそうな、余韻を残すラストだと感じた。

9mmの歴史に触れた、新鮮な第2幕だった。
新鮮といえばライブ定番曲『Talking Machine』、通常のライブでは、原曲と異なるイントロや卓郎がマラカスを振るシーンもあったが、今回は無し。CD音源通りにそのまま曲に入る、シンプルなステージだった。
そこも含めての"再現"かも知れない。細かい工夫がされている。

また、第2幕はメンバー4人のステージだった。第1幕でサポートメンバーとして演奏していた爲川裕也はこの時、ステージ袖で4人の演奏を見ながら、音に合わせて少し身体を動かしていた。

彼もまた9mmのファンゆえだと思うと、微笑ましかった。

 

アンコール

発表されたばかりの新曲『泡沫』が披露された。
新曲なのに、びっくりするほど今回の再現ライブにマッチしていた。
近年のシングルといえば『名もなきヒーロー』『白夜の日々』の様な明るい応援歌のイメージが強かった。
しかし泡沫は対照的で、少し暗めの哀愁ソング。そしてイントロの滝のギター、3拍子のリズム、歌い出しのメロディから、初期を彷彿させられる曲調となっている。
あまりにも9mmの集大成の様な曲。最初に聴いた時からこれだ!と嬉しくなった。

歌詞はBABELや初期のミニアルバム2枚にも通ずる"孤独"、"切なさ"、"愛"等を連想させられる。
失恋を引きずっているようにも思える。

もちろん最近の明るい曲も好きだし、それもまた9mmの特徴の1つである。
だが、

どこまでも沈めてくれ
戻れなくても構わないから
(『泡沫』より)

この曲は、苦しみから解放される事を望んでいないように感じる。
まるで初期の頃の孤独を忘れない、と言っているかのようだ。
聴いていると、9mmのそれぞれの歴史に戻る事ができる。
だからこそ今回のライブにて、この曲で締められたのはしっくりくる。

さいごに

BABEL、インディーズの2枚、最新曲。
3つの世界は決して明るいわけではない。
だからこそ、孤独や悲しみを持った時は、9mmの楽曲達に居場所を貰ってきた。

今の9mmは楽曲の演奏のレパートリーも増え、常に進化していっているが、根本は変わらなく、"らしさ"を忘れずにいてくれる。
それが彼らの個性であり、最大の魅力だろう。