*Minority Repor10*

ライブレポ * 音楽語り * たまに日常

【音楽文コピー】音楽が届けてくれた明るい世界【THE BACK HORN】

『音楽文』(powered by rockinon.com)に投稿した文章のコピーです。
2021年8月をもって新規投稿終了、2022年3月で掲載終了予定の為、
自信が投稿した文章のコピーをここに掲載します。

 

-----------------------------

音楽が届けてくれた明るい世界
THE BACK HORNのツアー期間中に得た変化と感謝

(掲載日 2021年4月7日)

ongakubun.com

 

2019年後半から2021年の4月までの期間、
THE BACK HORNの『カルぺ・ディエム〜今を掴め〜』ツアーが開催された。
私はその中で、2019年の福岡公演・今年2021年の大阪(心斎橋)・鹿児島公演に参戦。
この期間で世の中は勿論、自分自身についても大きな変化を遂げた事を実感させられた。

アルバム『カルぺ・ディエム』について、自分の中で楽曲の受け取り方が変わってきた。
というよりは、ツアー序盤には見えていなかったものが見えた気がする。

私がアルバムで一番好きな曲、“I believe”について、
例え誰に否定されても、諦めきれない自分に嫌気がさしても、叶えたい夢に絶対に嘘をつけない。そんな主人公の物語が頭の中に浮かんでいた。
今も同じ解釈を持っているが、去年からの「コロナ禍」という世の中の変化にも重ねて聴いている自分がいた。
この状況でもライブに足を運べる自分は恵まれている。
それでもどこか後ろめたい気持ちを抱えてしまう。
感染対策をして挑んでいても、これを良くは思ってない人々の言葉が脳裏に浮かんでしまう。
自分は間違ってるのだろうかと、心のどこかで感じる時もあった。

この曲はそんな自分の想いに触れてくれた気がした。
《なにもかもが正しくないなんて言われたって/理解らなくて時間だけが過ぎてってしまったよ》

辛いのは私達だけではない。音楽家の苦悩は計り知れない。
今年のライブではこれまで以上に、最後のサビの山田将司さん(Vo)の力強いボーカル、切なくも真剣な表情が印象的だった。まるで「歌を絶対に諦めない」と叫んでいるかの様に。

《もうこの夢だけ抱いて 全部裏切って/もうこの夢だけ抱いて あとは捨ててきたよ》
《ひとり闇の中で/描け 光を描け》

そして日常の「戦い」に寄り添う曲、"果てなき冒険者”。
2021年4月2日、鹿児島公演で観た、魂を込めて全力で歌い上げる将司さんの光景が脳裏に焼き付いて、思い出すと今も目頭が熱くなる。

《もし生まれ変わっても同じ道選ぶよ/受け入れた弱さと共に目指すから》
《大丈夫 まだ明日は見えるよ》

力強い歌声や演奏の中に、
バンドや私達がこの空間にいる事、
この不器用な選択と決意、
それらを受け止めてくれている様な温かさを感じた。

ツアー中、アルバムについて「自分達とファンとの関係性のようなもの」と、
松田晋二さん(Dr)が話していたと記憶している。

きっとバンドメンバーも私達ファンも、それぞれの場所で戦って、同時にお互いの幸せを願いながら過ごしている。
今回のライブを通して、そんな絆が見えた気がした。
ますます『カルぺ・ディエム』を愛すようになれた。

鹿児島公演の後半のMCで将司さんがこんな話をしていた。
「生きるのが難しい人はどの時代でも難しい、それで音楽に助けを求め、救われる人もいる事はどの時代でも同じ。」
「自分は音楽に心を開く事に時間がかかってしまった。」
「だけどTHE BACK HORNで歌わせてもらった事で、皆のお陰で、色んな人を信じられるようになった。」

沢山の方がコロナ禍で色々なものを失ってしまった為、本当はこんな話はすべきではないかもしれないが、この1年で自分自身、精神的に大きく変化したと感じている。
物事をしっかりと自分で考え自分で決める事、
ポジティブに考える事、
人に向き合い人に対し優しくある事。
それらを肯定したいと思える様になった。
これまでは後ろ向きで、傷ついた心に酔っていた。
みんなハッピー?そんなの綺麗事だよ、私は違う、変わらない。辛い事があればそんなことばかり考えていた自分に起きた初めての変化だった。

きっかけは様々で、例えばコロナ禍によって物事の本質を考える機会になった事も大いにある。
だけど何より、当たり前に会えなくなった色々な音楽家の言葉や歌、彼らが音楽を諦めないで居てくれた事、その真剣な想いが自分にも伝わったからだった。
こんなご時世でも、生きる事を諦めないで良かったって心から思っている。

私がバクホンで初めて好きになった曲は、学生時代に偶然に見た福岡のローカル音楽番組で聴いた”戦う君よ”だった。
今回の将司さんのMCを聴いた時、あの頃の事、今日までの事を思い出していた。

《世界を愛せるか》
昔は「自分の事すら愛せないから、いつか愛せたらいいな」って思ってた。
だけど今は「自分や世界を愛す為の選択をしていきたい」って思ってる。

《ためらうことも とまどうこともなく/いつかは君に幸あれ 光の中で》
昔から自分自身への救いの言葉だった。
だけど今は同時に、THE BACK HORNメンバー1人1人に対しても強く願うようになった。

曲を受け取り方は人の数だけあり、正解はない。それでも私は私なりに”戦う君よ”という曲に、本当の意味で向き合える様になった気がする。
きっと私も遠回りしていた。心を開く事に随分時間がかかったんだな。

大切な事に気づけた。鹿児島まで足を運んで本当に良かった。
そう感じていた時に披露された”戦う君よ”は、今までで一番特別に感じ、フレーズ1つ1つで涙が溢れ出した。
過ぎていく毎日の中で何度「消えてしまいたい」って思っただろう。そんな私を救ってきてくれたバンドが、目の前でこんなにも輝いている。
この曲に出会った約10年前の私に伝えてあげたい。
あなたがあの時に受けた感動や感性は間違ってなかった事を。あなたの世界は少しずつ明るくなっている事を。

根本的なところは変わらないし、これからも生き辛さを感じる時もあるだろう。
世の中だってこれからもどんどん変わっていく。不安もある。
そんな時はバクホンの事を、このツアーの期間で得た様々な感情を思い出して歩いて行こう。

 

戦う君よ

戦う君よ

  • THE BACK HORN
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes