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【音楽文コピー】恋の終わりが全ての始まり【back number】

『音楽文』(powered by rockinon.com)に投稿した文章のコピーです。
2021年8月をもって新規投稿終了、2022年3月で掲載終了予定の為、
自信が投稿した文章のコピーをここに掲載します。

 

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恋の終わりが全ての始まり
back numberに本気で向き合うまでの話

(掲載日 2021年6月29日)

ongakubun.com

 

私がback numberを好きになったきっかけは、2012年リリースの『わたがし』だった。
その時は「いい曲だな。新曲が出たらまた聴いてみよう。」程度だった。

数年後、好きな人ができた。片想いだった。
私が恋をした男性は恐らく、あの子のことが好きなんだろうなぁ。そんなのは分かっていた。
それでも近くに居られるなら嬉しい。だけど辛い。
心のどこかで無理していた感情に、名前をつけられなかった。
丁度その時期、back numberの昔のアルバムを度々聴くようになった。
iPodのランダム再生でふと耳に入った、片想いソング『stay with me』聴いた時、衝撃が走った。

"自分のことを歌っている。"

それからだ。back numberの全てのアルバム集めては、取り憑かれたように聴いていた。

私はやがて失恋をしてしまったが、
その経験が相乗効果となり、back numberの世界にどんどんハマっていく。
ファンクラブに入り、ライブで遠征をする様になり、気付けば自分の生活の一部となっていった。

この曲も、あの曲も、
どうしてこんなに私の気持ちを分かってくれるのだろう。
痛々しく救われないラブソングが、やり場の無い気持ちに向き合ってくれた。

あの時まさに、"人生を狂わされる程の恋"に似た感情を、このバンドに持っていたかもしれない。
しかし、時が経ち、その反動が来てしまう。


気づけば色々な歌番組でback numberを見かける様になった。
楽曲のアレンジが華やかになり、
失恋や片想いに問わられない歌詞も増えていく。

これまでのback numberは、恋愛や人生が辛い人向けの音楽だと思っていたが、
いつしか若者の"カリスマ"となり、キラキラとした人々のものになってしまったのではないか。
そもそも音楽は誰のものでもない。本当に傲慢な考え方をしていたと、今は反省している。しかし、当時の私は、売れていくback numberを素直に喜べない程度にモヤモヤしていた。
徐々に、このバンドから遠ざかっていった。

3大ドームツアー「stay with you」が発表された頃には、
1番好きな曲がツアータイトルとなったのもあり、行くしかないと思ったし、今後も楽曲を聴き続けるつもりではいた。
しかし、このライブが終わったらファンクラブを抜けようとも、内心考えていた。


2018年
「back number dome tour 2018 "stay with you"」

「ついにアイドルになったな」なんて考えながら会場に入る。
しかし、華やかなステージの合間、メンバーは小さなサイドステージに移動。
豪華な照明は無し、サポートメンバー無し、3人だけで初期のアルバム曲、『西藤公園』『重なり』が演奏される。
ずっとライブで聴きたいと思っていた、大好きな曲達だった。

CD音源も好きだが、今のバンドの演奏が本当に素晴らしかった。しっかり成長を遂げた上で、ドームという大きな会場に、自身の原点の曲を連れて来た。

「今日は人間のまま、くそダッセェバンドマンのまま、俺たちをここに連れてきて、本当にありがとうございます。」

これ程の大きなステージに立ったフロントマンの依与吏さん(Vo.)は、あまりにも"普通の人間"としての話をしていた。


2019年
「NO MAGIC TOUR 2019」

最新アルバム「MAGIC」のリリースツアー。
その中で披露されたアルバム曲、『雨と僕の話』について。

《君に嫌われた後で
僕は僕を好きでいられるほど
阿呆じゃなかった》

《終わったのさ
ただ 君と僕の話が
エンドロールは無い
あるのは痛みだけ》

初期のback numberを感じさせられる、痛々しく、救われない失恋ソング。
ピアノやストリングスの音が合わさり、美しく、切なく…気がつくと目から涙がボロボロ溢れていた。

「その日が幸せであればどんな曲でも受け入れられるけど、
その日が最悪な日であれば、そうはいかない。
そんな最悪な1日にきちんと寄り添える曲を、これからも作っていきたい。」

依与吏さんのまっすぐな言葉が突き刺さった。
理由は自分が一番認識していた。
失恋、挫折…最悪だと思った日に隣にいた音楽とか、おかげできちんと悲しむことが出来た理由とか。


2021年
「one room party vol.6」

ファンクラブ"one room"限定ツアー。
通常のライブと違い、珍しい曲を披露してくれるイベントだ。
現在はツアー中につき、曲の詳細は避けるが、
ここでも、依与吏さんのMCが印象的だった。

「one roomという"団体"じゃない。
あなたたち1人1人を大事に想っている。」

「他の人からしたら、"この曲知らない"って思われる曲だって、
ここにいるみんなは喜んで聴いてくれる。
それが本当に嬉しい。」


本当は気づいていた。
彼らは変わったんじゃない。
表現のレパートリーが増えただけだった。
back numberはずっと、昔からのファンを一番に思ってくれていた。


30代になった私は、恋愛ばかりではなく、他の楽しい事にも目を向けられる様になった。
以前は"好きな人さえ居れば、他には何もいらない"ぐらいに思っていたのに。
恋愛から離れた時に、改めてback numberのラブソングを聴くと、新しい発見がある。
人の内面や繊細に捉えて言葉にする事が本当に上手だし、
登場人物の日常が、彼の人生が鮮明に頭に浮かぶ。
美しいメロディで、楽曲のリアリティさが増す。

本当の意味で私はようやくback numberに向き合う事が出来たのかもしれない。


ところで、あの時片想いしていた男性が、
何周か周った結果、最近、ようやくあの子と上手くいった。そんな話を風の噂で聞いた。

当時、気が病んでしまうほど彼の事を想っていたのに、
今となって、どうしてそんなに好きだったか、経験や時間と共に、思い出せなくなっていた。

それでも、本気で辛かったあの時に、
back numberの曲を聴いて、救われた事は鮮明に覚えている。
この事実は一生忘れない。


これからもファンとして、one roomとして、
back numberの今後の活躍を応援していきたい。

そして、切ない経験をしてback numberにたどり着いた人へ。
決して幸せになる魔法はかけられないけれど、
私の一番好きな曲『stay with me』のこのフレーズが、いつか、あなたにとって意味あるものになりますように。

《すべての報われない想いに光を》

 

stay with me

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