*Minority Repor10*

ライブレポ * 音楽語り * たまに日常

「この気持ちもいつか忘れる」はカヤの"大恋愛"の物語

がっつりネタバレ&がっつり主観入った感想です。

住野よるさん著者の恋愛小説「この気持ちもいつか忘れる」を最後まで読みました。
きっかけは案の定、コラボ相手のTHE BACK HORNの音楽の影響。
色々な意味で重たい作品だったような気がした。
お陰で感想書くまでだいぶ時間かかりました…笑

出だしの印象としては「恋愛小説と詠いながらも、”拗らせ主人公が謎の女性に出会うファンタジー”」のような印象だった。
でも最後まで読んで気づいた。
紛れもなく主人公、カヤの”大恋愛”の物語じゃないか。

そもそも文学才能がなさすぎる自分なので雑に説明するしかできないんですが、
小説で描かれたカヤの人生は大体こんな感じであるかな。
①昔の恋人(和泉)の自殺未遂→恐らくだけどこれが原因で②の内面になる
②第一部。拗らせ捻くれ主人公カヤの学生生活。チカに出会う。
③チカに恋をする。そしてチカとの別れ。
④第二部。30代。元同級生の斎藤に再会、恋人同士に。
⑤斎藤に衝撃の真実を告げ・・・。
※第一部、第二部って勝手に付けてます;;

バクホン界隈の中でもカヤの評価って最悪だなぁという印象があって。
でもわたしは何故だか、あのひねくれた正確には一貫性があって、共感できる。
第一部の拗らせMAXな内面も、わかる気がするって思わされる部分があった。
住野さんが生み出すキャラクター構成、リアリティあって上手だなと思った。

上記③、カヤがチカに恋心を抱いて、それを自分で認識してしまった時ぐらいから個人的にかなり面白くなってきた。こうなればこの感情は止める事ができない。(ある意味「ハナレバナレ」の歌詞の様に)
だけど、どれだけ盛り上がろうが、どれだけ人生をかけた大恋愛だろうが、
そんな事で終わっちゃうんだなぁ…というのが恋愛の虚しいところ。
カヤのとある嫉妬心がきっかけで関係に亀裂が走り、2人は2度と会えなくなる。
最後にチカが何を思っていたのかカヤにも読者にも分からないのがまた切ない。
”カヤは自分が好きだっただけなんだね”
って言ったような気がするし、言葉通りなんだろうな。

④⑤の話。
物語は15年後。カヤは30代になり、一見学生の頃の陰キャぶりを見せるそぶりもなく、斎藤と再会して恋人同士に。一見観てる限りでは順風満帆だった。
だけど本当はカヤの内面はあの時から壊れていた。
でも、大人の恋愛ってそんなもので、それ自体は間違いではないし。
多分、言わずに墓場まで持っていくのであればそれが幸せかもしれない。
でもカヤはそれができず、斎藤に残酷な本音を打ち明けて、距離を置いた。
とりあえず316ページ。衝撃だけど個人的には一番盛り上がった場面。なかなかエグい。ロックだ。物語はこうでなきゃ(笑)。
…と言いつつ余談ですが、わたしもカヤと似たような事をしたんですよね、昔。
わたしの場合はあんな極端ではなかったし、だから相手を怒らせる事もなく別れたんだけど。本当自分の気持ちの問題だし、いつか変わるかもしれない…って思ってそのまま黙っておけばよかったのに、でも無理だったんだよな。
そういうところも含めてカヤの気持ち、結構理解できる。
何よりこのシーンを迎える前のカヤ、スマートすぎて上っ面で、その時の彼の方がわたしは怖くて仕方なかった。
カヤはあの日から心から恋愛を楽しまなかった、相手が望むことだけ、一時的に喜ぶことだけ計算して行動した(まるで不倫男の手口です笑)、心なんてなかった。
というよりは、チカが心の中にいればそれだけでよかったんだろう。

そしてもっと残酷な真実に気付かされたのはカヤ自身だった。
”チカと過ごした事実だけは記憶にあって、チカへの想いは思い出せない”
この感情がきっと物語の大部分なんだろう。
どれだけ気が狂ったように恋をした相手でも、終わってしまえばあっけない。好きだったことすら思い出せない。きっと今どこかですれ違っても、”普通の女性”だって思わされる。それが恋愛。
(何故かわたしの人生のバイブルである漫画「失恋ショコラティエ」を思い出す)

それで自分の全てを失った気持ちになったカヤを斎藤は見捨てなかった。
その事実をネガティブに捉えないように、そしてそんなカヤに手を差し伸べた斎藤、、、、、本当いい女すぎる。まじでかっこいい。斎藤のような女性に出会いたい人生だった笑
全てなかったことにとか全て順風満帆に、とかではなく、
カヤにあったある種の"呪い"を解いてくれるきっかけになった斎藤との未来を生きる選択をした事が伺えた結末は、何だかほっこりした。

なんだかんだ入り込みすぎて、途中からバクホン目的だという事も忘れてしまっていたぐらいですが笑…
作家・音楽家それぞれが相手の作品にリスペクトしながら完成していく、というコンセプト、素敵だなぁと思ったし、
それで完成した小説のストーリーが、何気に自分の今までバイブルになってきた恋愛ものに通づるものはある、のはバクホンファンとしても何故か嬉しくなり。
まだ回収できてない場面もあるので、また読み返そうかな、と思います。

回収できてないところの1つは、チカがカヤ以外に出会った人(女性)は誰だったのか。色々な感想を見てると、和泉説が結構出てきますね
わたしは最初読んだときはアキさんなのでは…?と。
チカから輪郭の一部のフレーズを聴かされて、それがきっかけで輪郭のフルコーラスを完成させた…という妄想をしてました。
ただ残念ながら年齢設定的にその可能性は少ないですね。カヤとチカが出会った頃、アキさん5歳前後ぐらいかな。。。

【追記】
斎藤が好きすぎてチカの話あまりしてないって思ってたところで、そういえばこれを言いたかったんですよね。この作品って、
物語のヒロインがチカで、カヤのヒロインが斎藤
なのかもしれない、って何となく思った。それだけ。