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【音楽文コピー】迷いながら、人間らしく。【The Cheserasera】

『音楽文』(powered by rockinon.com)に投稿した文章のコピーです。
2021年8月をもって新規投稿終了、2022年3月で掲載終了予定の為、
自信が投稿した文章のコピーをここに掲載します。

 

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迷いながら、人間らしく。
どんな時も隣で寄り添ってくれるバンド、The Cheseraseraへ。

(掲載日 2020年8月13日)

ongakubun.com

 

『The Cheserasera 2020 夏の幻像 ワンマンライブ』
が2020年8月3日に開催された。
大好きなThe Cheserasera(以下、ケセラ)の生配信ライブ。沢山の期待とほんの少しの心配を持ち、開演を待っていた。

「心配」の正体はその3日前、2020年7月31日の夜。
Vo.宍戸さんは定期的にWeb配信をしてきたが、この日は告知なしで突如Instagram配信を行なった。

「新曲の歌詞がうまく書けない。皆だったらどうする?」

その時彼は、私たちファンにそんな悩みを打ち明けた。
その他はいつも通りの何気ない明るい雑談もあり、
最後には「今日から頑張って歌詞書くね」と話し、配信は終了した。

辛い時悲しい時、私はいつもケセラの、宍戸さんの歌詞に、数えきれない程励まされてきた。
だけど改めて気づかされた。音楽家も1人の人間であり、悩みや苦悩と戦いながら生きているのだ、という事を。
 
私がケセラに出会ったのは2015年頃、Webで「今年ブレイクしそうなバンド特集」の様なものをたまたま見つけ、一通り動画を見ていた。
その時に出会ったのがケセラの“東京タワー“だった。
疾走感があり、だけどどこか哀愁漂うサウンド。切なさがじわじわ押し寄せてきて、すぐに楽曲の虜になった。
何より、曲に乗せて奏でられる歌詞に胸が熱くなった。
大人になり、色々な経験を積み、慣れや諦めが増えてきた。それなのに、偶にどうしようもなく寂しくなる。孤独を感じる事も増えていた。
私が住んでる付近には東京タワーの様なものは無いが、
会社からの帰り道、夜道を歩き、空を見上げながらこの曲をよく聴いた。それだけで少しだけ、心の隙間を埋められてる気がした。

2017年、ケセラの音楽に完全に虜になるきっかけの楽曲に出会った。
30歳手前になり、周りの同年代の結婚・出産の話を度々聞く様になった。
だが私自身の恋愛はズタズタだった。自分の恋心はいつも重かった。失恋なんてした時は、まるで世界の終わりの様に病んでしまっていた。
他にいい人がいるよ、なんて言われても乗り気になれない。紹介されても素直に楽しめない。傷ついて立ち止まって、傷つけて立ち止まって。昔から何も変わらない。成長できてない。
・・・だけど心のどこかで思っていた。
恋愛で成長するってなんだろう?
傷ついてるのに平気って嘘つくこと?
裏切られても許せってこと?
わかんないや。

そんな頃、ケセラが“I Hate Love Song“という楽曲を配信した。一見、明るめの曲調だが、歌詞は皮肉まじりの失恋ソング。
《あんなに愛した後で
まっすぐ前だけ向いて
シラフで生きていられる事の方が
ドラマだったよ》
まるで私の心の内を吐き出す様なフレーズの数々に、驚きが隠せなかった。
同時に、自分の恋愛感のモヤモヤが少しだけ剥がれた様な、晴々しい気持ちになれた。辛いものは辛い。嘘はつけない。きっとそれでいいんだ。変わることのできない私を許してくれるように思えた。
 
思い返してみても、ケセラに出会った時から今まで、
宍戸さんのリアルな歌詞に沢山助けてもらった。
だから、彼のスランプには、いちファンとして勝手に心配してしまっていた。
どうかケセラらしい、そのままのステージを見せてくれるだけそれだけで十分だから。
そんな想いと共に、8月3日の生配信ライブを迎えることになった。

先日まで長かった髪を短く切って登場したVo.宍戸さんと、Ba.西田、 Dr.美代さんのメンバー3人が向かい合って奏でる、夏らしい軽快なサウンド“Escape Summer“でライブが始まった。
今回の配信ライブのコンセプトは「季節」。夏から始まり、秋になり、冬が訪れ、そして春が来る。そんな季節の巡りを表していた。まるで私たちの生活そのもののセットリストだった。

最終ターンで、出来たばかりの新曲が披露された。
「何にしようかな、変わるかもしれないけど・・・”2020年、宇宙の旅”」と悪戯に笑いながら仮タイトルを発表した宍戸さん。
3日前のあの時に話していた曲なんだろうか。
目の前で奏でられる音楽を聴いていると、そんな事はどちらでも良くなった。
爽やかであり、だけどどこか芯がしっかりしている、
切なくて、温かくて、優しい。
そして、初めて出会ったあの東京タワーの様に、景色が、情景が真っ直ぐに思い浮かぶ。

《そのいち 今までの僕にさよならを
そのに 思い切り深く息を吸う》
終わりからの始まり。
そんな事を歌ってるように聴こえた。
大人でも、まだまだやれることがある。
やり直せる。始められる。
この曲が、また私の背中を押してくれるんだろうな。

今日の宍戸さん、髪をバッサリ切って、今までで一番穏やかで優しい表情で、画面の先の私たちをまっすぐ見つめていた、そんな気がした。
その笑顔を見て、本当によかったと、涙が溢れた。
やっぱり宍戸さんの歌詞、大好きだよ。

“最後の恋“の冒頭で
「音楽が好きだー!」と叫ぶ宍戸さん。
この曲がリリースされた時のことはよく覚えている。
バンドの現状、メンバーだけで撮影したMV・・・SNSで宍戸さんが赤裸々に語っていた事があった。
こんな素敵な音楽を作るバンドの苦悩に直面して、当時、本当に衝撃敵だったことを覚えている。
悔しかった事も沢山あっただろう。
だからあえてこの曲で「音楽が好き」と心から叫んでくれたのが嬉しかった。

ラストは自分にとっても大事な曲、
「最低で最愛で、やっぱり最低なラブソング」(宍戸さん談)である、“I Hate Love Song“が披露される。
先程までは季節のや景色の温かさを感じさせる、柔らかいステージだったが、
それとはある意味対照的で、尖っていて、攻撃的だった。

《頭の中ではわかっていたって
納得できない事もあるさ
これで終わりでもないし
割と希望とかあるし
愛するココロは捨てないでなんて》
・・・・・・・・
《笑わせんなよ!!!》

通常のライブではオーディエンスが叫ぶシーンだが、今回は無観客の為、宍戸さん1人の声が響き渡っている。
そんな、今までで一番皮肉めいた《笑わせんなよ》に最高に鳥肌が立った。
でもどうしてだろう、こんなに怒りの感情全開なステージなのに、先程までの切なく温かい楽曲達のステージを聴いた時と、どこか似た感情が芽生えている。
まるで、私たちの最低で最愛な恋愛の痛みを、代弁し発散してくれている様だった。
 
配信ライブが終了し、改めて感じた。
やっぱり私はケセラの人間らしい歌詞が大好きで、
その世界観を表現するあのサウンドが大好きだ。
ケセラの音楽はいつも、自分の現実の苦悩に手を伸ばし、隣に寄り添い、居場所になってくれている。
これからも私はきっと、迷って、転んで、乗り越えて・・・を繰り返す人生なんだろう。
どの瞬間も人間らしく、全力で、The Cheseraseraの楽曲と共に歩んでいきたい。

 

グッドラック

グッドラック

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