『音楽文』(powered by rockinon.com)に投稿した文章のコピーです。
※2021年8月をもって新規投稿終了、2022年3月で掲載終了予定の為、
自信が投稿した文章のコピーをここに掲載します。
-----------------------------
心に寄り添うロックスター
THE YELLOW MONKEY JAMとの出会いから東京ドーム2Daysまで
(掲載日 2017年12月12日)
私は17年前のイエモンを知らない。
イエモン結成の年に生まれ、解散したのは私が高校にあがった時だった。そこからずっと色んなバンドを聴いていたから、イエモンという単語が頭の片隅にはあった。でも、彼らの音楽にそれほど触れる事も無かった。
そんな私は2017年12月、東京ドーム2Daysを目撃する。そのきっかけを作ったのは去年たまたま見た音楽番組だった。「心に残るフレーズ」みたいな特集があり、そこで“JAM”のラストの部分がVTRで流れた。
《外国で飛行機が墜ちました
ニュースキャスターは嬉しそうに
「乗客に日本人はいませんでした」
「いませんでした」
「いませんでした」
僕は何を思えばいいんだろう
僕は何て言えばいいんだろう
こんな夜は逢いたくて
逢いたくて
逢いたくて
君に逢いたくて
君に逢いたくて
また明日を待ってる》
たった一瞬の出来事。私は出会ってしまったのだ。吐き出したい感情、吐き出せない感情、そもそも何が不満で何が寂しいかなんて上手に言語化できない、もういい大人なのに。そんな心のモヤモヤをただそのまま表現していた音楽に。
それがあまりにも儚く美しかった。テレビを見ていた私はわけが分からない程に涙が出てきて、その夜近くのCDショップまで走って、JAMが収録されたアルバムを手に取る。その日からイエモンの音楽は私の人生の一部となった。
そして今年、東京ドームの告知が出た際に、「大きな会場で演奏されるJAMが聴きたい」と、参戦を決意。初のイエモンライブにして、初めて東京ドームに足を運ぶ。
そして始まった、
『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017』
まず東京ドームという大きすぎる会場、凄い。一瞬で飲み込まれそうになる。だがその会場全体をを逆に飲み込んでしまう様なステージ演奏に圧倒されてしまう。思わず「本物のロックスターだ」と呟いた。ステージの上でたった4人のスターは、2日間、圧倒的なパワーで10万人をロックンロールの世界に引きずり込む。
初日、吉井さんは「17年前の東京ドーム公演がトラウマになっていた」と話していた。こればかりは、当時居合わせていない自分には何も言えない。その解散ライブと今回を比較することは出来ない。それでも無邪気に笑うメンバーの笑顔がスクリーンに映った“太陽が燃えている”を聴いた時、不思議と安心し嬉しくなった。もしかしたら、もしかしたらだけど、そのトラウマは2017年12月10日をもって克服できたんじゃないかって思った。
最終日。
「この曲は、本当は皆の為に歌いたいけど、
今日はここにいる一人一人に歌います」
吉井さんがどこか優しい表情でそう語った直後、
“JAM”のイントロが流れる。サイドスクリーンに映るのは、羅列された全ての歌詞。《時代は裏切りも悲しみも全てを僕にくれる》《素敵なものが欲しいけどあんまり売ってないから 好きな歌を歌う》決して明るくも幸せでもない、切なくてどこか祈るようなフレーズが会場に響き渡った。
この曲に出会って1年と少し。私は相変わらずいい大人にもなって情けない程に素直に生きられない。何も変わってない。それどころか辛いことがあっても嘘ついて笑う事が増えた。今日この頃は1人の時でさえ、大丈夫、平気だよ、幸せだよ。なんて自分に言い聞かせ続けていた。
この曲は全部見抜いていた。まるでイエモンの4人は、そんな嘘で固められた私を引きずり出そうとしてくれている、この東京ドームという会場で。そんな気持ちになった。JAMが始まってから最後の曲まで、どんどん溢れ出てくる涙を止める事が出来なかった。ラストの“悲しきASIAN BOY”の最高の盛り上がりで、何だか可笑しいくらい泣き笑いしたまま終演を迎えた。
この2日間の事は絶対に忘れない。そしてまたこの場所で彼らのステージを見たい。もっと強くなって、絶対に帰ってくる。
《生まれ変わってもまた会おう
同じ場所でまた会おう》
そんな誓いを掲げ、東京ドームを後にした。
きっと自分と同世代の大人、若い世代のバンドファンで、イエモンを聴いたことない方もいるんじゃないかなと思う。そんな世代にこそ知ってほしい。
何をしたらいいか分からない、未来が見えない。逢いたい人がいるけど上手くできない。毎日が辛い、悲しい...。ネガティブな感情に襲われどうしようもなくなった時には、JAMという曲を聴いてほしい。救われはしないかもしれない。だけど絶対に味方になってくれる。そっと、隣に寄り添ってくれる音楽だと思うから。